今回取り上げるのは、ナムコの『エースコンバット3 エレクトロスフィア』。
プレイステーションの名物シリーズの1つなので、
あまり説明する必要も無いとは思うが、一応解説すると、
戦闘機のパイロットとなり、対空・対地戦闘、護衛など様々な任務をこなしていく
フライト・シューティングゲームである。
いや、「飛行機ゲーム」である。
さすがに実際の飛行機を操縦した経験はないのだけれど、フライト・シミュレータを体験したかぎり、
飛行機の操縦と言うのはとかく難しい。
パイロットはコクピットの中で、大量の表示機器や操作用の装置と格闘し、
上下左右前後、3次元の感覚を要求され、重力や推力といった目には見えない物理の概念と戦わなければならない。
特に飛行機の”失速”は、飛行機に詳しくない人には分かりにくいところだろう。
(飛行機は、”翼に受ける風”で上に浮いている。自分のスピードがなくなると、
翼に受ける風の量が減ってしまい、浮くことができなくなる)
まともに飛べるようになるにはかなりの経験が必要で、
それまでに何度も地面に激突する羽目になった。
そんな中で、このゲームの飛行感覚は良い意味でライトだ。
操縦はスティックとLRボタンだけでOK。
失速はほとんどなく、空中で何個もループを描くのも楽勝。
操縦時に感じる抵抗とあいまって、独特の空気感が存在する。
ミッションが終わった後のリプレイに、つい浸ってしまう。
また、AC3で特徴的なのがストーリー描写だ。
そのストーリーもありがちな軍事モノではない、SF調の世界観が際立つ。
ゼネラルリソースとニューコム、2つの巨大企業間の紛争と
電脳世界(エレクトロスフィア)におけるヒトの電脳化を巡るストーリーが描かれている。
物語の語り部となるのが、
テレビ番組+テレビ電話という次世代情報端末「データスワロー」。
テレビ電話(時々、留守電)を通じて話す個性豊かなキャラクターはもちろん、
放送される番組自体もドキュメンタリーから、企業のCM、文字放送と豊富。
かといって、設定の説明をタラタラ流すような退屈な物ではなく、
あくまで雰囲気作りの一環に留まっている。
「皆さまの生活を支えたい、ゼネラルグループ」というゲーム冒頭のゼネラルリソースのCMなんかは、
何度見ても噴き出しそうになってしまう。
5種類あるエンディングも、謎が謎を呼んで、考えさせられるものがある。
丁寧に”世界”が作られている、というのを感じた。
”リアルさのない”軽快なフライトとSF的な世界感とが、お互いをうまく補強しあっていて、
私はこの世界観・雰囲気にすんなり没入できた。
『エースコンバット3 エレクトロスフィア』は、
自身が「戦闘機・空戦をエッセンスとしてストーリーを展開させる」、
いうなれば、戦闘機マンガ/アニメとしてよく出来たものになっている。
リアルさを求めたフライトシミュレータは、テクノロジーの成長と共に
既にその目的を達成しつつあり、発展する余地が無くなってしまった。
同時に、PCでフライトシミュレータを作っていたメーカーは続々と
合併・倒産し、次第にその数を減らし、
フライトシムは、細々としたジャンルになってしまった。
誤解なきよう付け加えておくと、リアル重視が悪い、ということを言いたいわけではない。
しかし”飛行機を操縦するソフト”が次々と消えていく中で、
・あえてシミュレータ的なリアリティやミリタリー路線を持ち出さずに、
・ゲーム初心者でも楽しめるライトで気持ちのいい操作感覚に加えて、
・様々なエッセンスを活用して世界を作り上げ、ストーリーを魅せる
といったところに、『ゲーム』としての活路があるのではないだろうか。
『エースコンバット3 エレクトロスフィア』からは、そういった
リアル路線ではない「飛行機ゲーム」としての在り方を見て取ることができる。
(同様の試みは、マイクロソフト/Zipper InteractiveのPCゲーム『Crimson Skies』でも見られる。
今なら低価格で買えるので、こちらもお勧めしたい一品。)
どこまでも遠く、高く。なによりも速く。
蒼空と戦闘機乗りたち。そこにはロマンがある。ドラマがある。
空からは”世界”が広がっている。
以下余談。
AC3の終盤戦で扱う機体にXF/A-36「ゲイム」と言うのがあるのだが、
この元になった機体X-36は、NASAが実験しているリモート操縦の無人飛行機であったりする。
しかも信じられないことに、垂直尾翼(縦にくっついている羽根)が付いていない。
実機のX-36のことはゲームプレイ後に知ったのだが、
よくもまあマイナーなトンデモ飛行機を出したなあ、と思うと同時に
『ヒトの電脳化』がテーマであるAC3の世界観にこれほどマッチした飛行機も果たしてあるだろうか、と唸った。